アトピー性皮膚炎 

一般的な治療方針  

各年齢層に伴うアトピー性皮膚炎の変化
乳児湿疹 INFANTILE ECZEMA

乳児湿疹はアトピーの前兆であるとする意見もありますが、私は早期にそう決めつけるのには反対です。この子のように、頬が紅潮し、がさがさし、鱗屑(皮膚が剥げた感じ)が主な症状で、額や鼻根部分には痒みを示すひっかき傷がみられます。ただ、涙や、よだれや、食べた物などがつねに接触する部位で、お母さんの着物、布団などにも触れやすい場所で、がいして身体はきれいなのです。こういう子の多くは、乳児期を過ぎると何事もなかったようにきれいになる例が多く、アトピーと断定して、食物制限をしたり、長期にわたり服薬を勧めるのには慎重でなくてはなりません。

アトピー性皮膚炎 ATOPIC DERMATITIS

加齢とともに皮疹は体幹、四肢に拡大し特に下の写真のように肘の内側、膝の裏側などに苔鮮化局面を伴うアトピー皮膚をていしてきます。

原因については様々な意見があり、確かにアトピー素因は遺伝傾向がありますし、食物(卵、ミルク、大豆、小麦、米、、、、)との関連もあり、また家のほこり(ハウスダスト)、ダニ、かび、各種化学物質、があげられているのはご承知のとうりですが、気温、湿度、季節、その他不明のものによって修飾されてもいます。

従って、治療も思うようにならずいたずらに不安をかき立てるアトピービジネスと呼ばれる産業を生み出しているゆえんです。ーー水、どこそこの温泉、なんとか茶、各種空気清浄器、訳のわからないエキス、秘伝の漢方、数え上げたらきりがないわけですし、雑誌も「アトピーが治った」「驚異のアトピー撃退法」だのと毎月のように特集を組んでいて、結構売れているということは、今日の医学が対応し切れていない、決め手がないことの反映でしょう。

学会の発表も分子レベル、遺伝子レベルでの解明は進んでいるようですがようとして、現場に生かされるほどの画期的な進展はなく、苦慮しているのが現状で、怪しげな専門と称するカルト的病院もあちこちにあるようです。

小児科と皮膚科の間でもこの疾患に対する考え方には若干の相違がありますし、小児と成人ではまた違う見方がなされているようです。食物関与に関して、厳しい食事制限(度の過ぎた)がなされた時期もありましたが(今でもそうした傾向は強い)栄養障害、情緒障害などもみられ現在では反省期にあるようです。

一方、食事制限で期待したほど改善されなかったことから、食品添加物、調味料、防腐剤、油、等々、より細部の検討もなされています。

いずれにしても、一元的に解決しようというのはちょっと無理がありそうです。

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1.発症原因への対策

  a. ダニ(コナヒョウダニ、ヤケヒョウダニ)、ハウスダスト、カビ類など室内環境因子

    室内環境の変化(サッシなど密閉度の高い構造、暖房、カーペット、ソファ、ベッド、ペット、

    ぬいぐるみ、植木鉢など快適な住環境はダニにとっても快適、除去のための    

    多くの工夫がなされているがゼロにするのはきわめて困難),湿度の管理が最も有効といわれるが

    数知れない化学物質の関与も指摘され、効果は一定の限度がある。

  

b. 卵白、牛乳、大豆、小麦粉など食物抗原

  単独なら除去、代替あるいは軽減可能だが、

  数種にわたる場合、栄養学的見地から

  厳しい制限は勧められない。続けて大量に

  摂取しない、加熱処理するなどの方法で

 aより対処しやすいし、食物抗原は加齢とともに

 消化能力も発達し、あまり関与しなくなってくる。

 ただ、代表的な食物抗原以外に、加工品、

 添加剤、安定剤、色素、などの関与も知られて

 おり除去、代替のみで軽快する例は少ない。

アレルギーおこす食品24品目に表示義務

 厚生省は、急性で深刻なアレルギー症状を引き起こす可能性のある食品24品目(表参照)について、食品衛生法に基づく原材料表示を義務付けることを決めた。卵、牛乳などよく知られた食品のほか、マツタケやアワビ、オレンジなども含まれている。 本来の形のまま販売されるものは表示を義務付けず原材料表示の対象となる食品包装された加工食品の成分として含まれるものだけに限定したい考え。厚生省の研究班が全国の1123病院から回答を得た調査では、ソバやエビ、キウイなど、なめる程度の摂取で呼吸障害や意識障害を引き起こした例も報告されたことなどから、ごく微量でも「エキス含有」 「五%未満」などの表記を製造業者に義務付ける。

深刻なアレルギー(アトピー以外も)の原因              (数字は症例数)00−7
179 イカ
牛乳 161 豚肉
小麦 99 鶏肉
そば 59 さけ
えび 31 もも
ピーナッツ 19 かに
大豆 14 オレンジ
キウイ 14 くるみ
牛肉 12 やまいも
チーズ 11 りんご
イクラ 10 まつたけ
さば あわび

 コメント 私は、痒みと快適さ、あるいは食事制限に伴う苦痛とを天秤に掛けてほしいと思っています。

      皮膚の見かけにとらわれ、かえって子供によりつらい思いをさせないでほしいのです。

2.外用療法

  a.スキンケア

     これはアトピーに限らず常に気をつけてやらなければならない項目です。厳密にいうと

    部位、皮膚が乾燥傾向にあるか、二次感染などで分泌物があるかなどによって石鹸を使い分ける

    必要があるのですが、原則として皮脂をとりすぎる石鹸はさけ、赤くなったり、ただれやすい場所は

    薬用石鹸を使用することと、大人のようにごしごしこすらないこと。      

  b.かゆみ止め

     これもアトピーのもっともつらい症状ですからしっかりケアしてやらなくてはなりません。

    暖かくし過ぎないこと、刺激性のある服(素材のみならず織り方、丸首など形状など)は避け

    髪も短めにしましょう。虫さされや、発疹疾患は痒みを増加しかきこわして二次感染をおこします。

    早めの処置と、爪の清潔が大切です。虫さされなどはとりあえず冷やし一般的なかゆみ止めの

    塗り薬を使ってやるといいでしょう。二次感染(発赤、腫脹、分泌物)を起こした場合小児科科

    皮膚科を早めに受診し、適切な塗り薬、飲み薬を併用して下さい。PHOTOGRAPHYにもありますが

    中等症以上のアトピーのほとんどは二次感染(多くは黄色葡萄球菌)によってランクアップして

    いるように思います。

    喘息も同じですがアレルギーの治療にこだわっていてはかえって悪化させてしまうことがあります。

  c.ステロイド剤

     すでに述べたとうり、この薬剤は使い方次第ですばらしい効果を発揮します。怖い薬などという

    アトピービジネスの口車にけっして乗らないように。(もっとも、最近はアトピービジネスを糾弾する

    記事が一般週刊誌に特集されるようになってきましたが)。

    ただ、強い薬(ステロイドには穏やかな作用のものから強力なものまで多くの種類があります)を広範囲に

    漫然と使うと明らかに副作用があります。

    とりわけ、赤ちゃんの体表面積は小さいわけで、この面積は大人に換算するとどのくらいになるか

    考えて塗る必要があります。

    外用薬の怖さは、その作用より使用量が不確実な点にあると思っています。安易に使いすぎるのです。

3.内服療法

  a.抗アレルギー剤

  b.かゆみ止め

  c.その他

 

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