ちょっと一言(monologue) 

このページは、私の憂さ晴らし、繰言を述べるためのものです。

ですから、最初にお断りしておきますが、別に読んでいただかなくても結構です。

もとより、小児科は保険制度の欠陥から肩身の狭い思いを長くしてきました。

ちょっと考えていただいたら納得していただけるわけですが、同じ薬を出しても、大人の

ざっと1/3とか1/5くらいの量ですみます。2歳の子が検査してといいながらやってくることはありません。

2−3人の付き添いを連れ、ロビーで大騒ぎを繰り広げ、いざ診察となると泣き叫ぶわ、

手足を振り回すわで、看護婦さんも助手さんも、くたくたです。時間外、深夜が多いのも不評です。

薬も出来合いのカプセルを数えて渡すわけではありません。体重にあわせひとりひとり、まさに調剤するのです。

薬剤師さんにも嫌われます。つまり、人手ばかりかかり収益率の悪い不採算部門なのです。

したがって、総合病院などではリストラの第一候補で、事実、最近有名な病院で

小児科の入院設備を閉鎖したという話をよく聞きます。

医者の世界にももちろんブームというのがあって、今、なり手がないのは産科医と小児科医です。

スタッフに嫌われ、経営者にさげすまれ、患者さんにまでおしっこかけられたら、よほど忍耐強いひとでも

ひねくれてしまいますよね。小児科医が愚痴っぽく、怒りっぽく、ひがみっぽいのには

こうした深い理由があるのです。

どうせ読んでもらえないページだし、好き勝手、書かせてもらうつもりです。ア、またすねてる。


MRワクチンの怪(2006/4/1

またまた繰り言です。

すでに予防接種法改悪として意見を述べておきましたが、 なんと厚生労働省は3月31日になって、4月から

自己負担の任意接種となる麻疹(ましん)、風疹それぞれの単独ワクチンを、公費負担の定期接種として今夏にも

復活させることを決めたのだそうです。といっても、一週間前からまたまたメディアに流れ、 我々はやきもきして

いたのですが。

  厚労省は、昨年夏に子供に免疫を確実につける目的(本当は一回接種では免疫が落ちてくるので二回接種で

維持するというのが本来の考え方だと思うのですがそれはさておき)で、従来の単独接種(各1回)にかえて、

4月から麻疹・風疹混合(MR)ワクチンの2回接種を定期接種として導入することを決めたわけですが、

これはもうずっと前から小児科医が要望していたことであり、 そもそも遅きに失した、世界の流れから取り残されて

いたわけですが、 何を思ったのか1〜2才までに一回、入学前1年間に二回目を実施とし、 従来の90ヶ月まで

という期間を一気に大幅に短縮してしまったわけです。 そして現行の単独ワクチンは定期として認めないという

きわめて 唐突で不公平な規則まで加えてしまったわけです。 1歳を過ぎたらできるだけ早くという意図は分かる

のですが、すでに二歳を過ぎて、 両方未接種あるいは、どちらかの単独ワクチンを接種済みの子供に、

もう一方の単独ワクチンを接種しようとすると自己負担になることなどから、 現場の接種医は取り残されるお子さん

が増え、 新たな流行が懸念されるとして批判してきたわけですが、 とうとうこの時期になって態度を翻したのです。

それはともかく、再度の法改正が必要ですから、 復活する(実施前だから復活というのもおかしな話ですが)として

も夏頃からといわれ、そこにまた空白が生まれます。 また、2期を受けられるのは、1期をMRで接種したお子さん

に限られるとしたため、 実際の二回接種は5年以上先になるわけで、二回接種の効果はそれ以降にしか現れませ

ん。 そのいいわけとして、既に単独ワクチン接種を受けた子供にMRワクチンを打つことに関して 安全性が確認さ

れていない、数年間かけデータを蓄積していくなどと かたくなに回答していたのですが、 この件もあっと言う間に

手のひらを返し、OKを出しました。 いったい、なんだったのか?こうした態度そのものが予防接種制度に大きな

不信を与えたと言えます。 アウトをセーフ、本塁打を二塁打といった審判と同じですから。

4月1日からMR中止へ!!なんて通達が来るのではないかと 悪いジョークをいう仲間もいましたが、

私自身あり得なくもないと今朝まで思っていました。

 実は、この姿勢変換にはPSE問題があったのではないかと思っています。 いわゆる古い電気製品に対する

通産省の法令改正に対し、 取扱業者から猛反発を買い、ヴィンテージ楽器は除くなどとわけも分からない

お役人がいったことから、世界の坂本龍一氏が吠え、おろおろになった件です。 こんな大騒ぎになるのを恐れて

後先考えず、遁走したのではないでしょうか? ま、駆け込みで風しんワクチン接種される方が増え、 品薄になる

という予想外(いや予想通り)の事態も発生しましたから、 お役人って、意外と先を読んでないんだということも

露呈しました。

ま、この半年弱の間に、かなりの方が麻しん、風しんをすませたという いいおまけだけは残りはしましたが。

日本脳炎ワクチン中止?騒動(2005/5/30

どうせまた同じようなことを書き連ねるような気がしますが、いかにも唐突でした。しかも月末の月曜日の朝、

某Y新聞社がスクープっぽくこのことを報じたのです。内容はともかく医療現場に知らされることなくこうしたことが

報道されてしまう厚生労働省の不手際に憤りを感じます。400万人もの接種対象者はもとより、この事業に携わって

いる、というかお手伝いをしている医療関係者にまずきちんとした説明をしてから発表して欲しいわけです。

大臣が重要な記者会見をすると予告し、国民に説明すべきほどの問題なのであって、木っ端役人が記者の質問に

あたふたと答えるというたぐいの問題ではありません。おそらく、当日従来どおり接種した関係者は多数あったと

思います。予防接種は国の防衛戦略だという認識を持っていただきたい。

で、ワクチンの副作用ではないかとされたケースはすでに昨年秋にわかっていたことで、今まで何をしていたのかと

いう話になります。もし、因果関係が立証されたのなら、その間の経緯を逐次伝え、もっと早い段階でいつから

こうするという情報を流しておけばこうした混乱も起きないでしょうに。

で、その内容ですが、とにかく関連が否定できないから、積極的勧奨を控えるという訳の分からない文章で始まりま

す。そもそも、義務ではなかったわけで(このこと自体もおかしいのですが)勧奨とは「しておいた方がいいですよ」と

いうことで、積極的とは、義務を負わせるようにもとれます。あるいは、繰り返し繰り返し「しておいた方がいいです

よ」ということは控えるということなのかな?一度くらいなら言ってもいいのかな?

通知を読んでいただくとわかるのですが、「念のために戸外へ出るときには、できる限り長袖及び長ズボンを身に

付ける」「日本脳炎ウイルスを媒介する蚊に刺されないように」。ああ、子どもの頃そんなことを言われていたな〜〜

でも、今からのこの季節に誰がそんなファッションをするの、蚊をみてこれはウィルスを持っているって誰がわかる

の?つまるところ、まわりにそういう蚊はいて刺されると日本脳炎にかかるかもしれないよっているわけですねぇ。

そういう心配をしなくてよくなったのはワクチンのおかげだったのですよ。

一方で、日本では日本脳炎患者は減ってかかる可能性は少ないからここで中止してもいいでしょうなどと

おっしゃる。子どもにも説明できません。蚊取り線香やさんから何かもらったの?と勘ぐりたくなりますわね。

北海道では、コガタアカイエカが生息しないから日脳は公費でしていないのは周知の事実です。ということは、

本州以南、特に西日本は危険、だからワクチンをしてきたんでしょう。もっと流行している地域へ行く方へは強く

勧めているわけでしょう。

そもそも、この副反応は起きうるということはワクチンの添付文書にも記載されていて、それもこの4月の改正薬事

法に適合したばかり、予防接種の手引きにも書かれています。けれども、接種した方が、利益であり、しない方が

不利益だから勧めてきたわけです。医療というのはすべからくそういうもので、100%こっちがいいと言うことは

まずありません。この機会に、そのことを再認識できるくらいしか今回の騒動の利益はありません。

私は、そうしたことを理解した上で、接種をお薦めしますし希望される方には接種し続けます。

何たって、やめて大変なことになった歴史を忘れていませんから。

2005ノロウィルスって

高齢者の施設で集団感染が起き、複数名の死亡者がでて、その原因はノロウィルスといわれ、メディアはこぞって

いろいろ書いていますが、あいもかわらず不勉強、不安のみをまき散らしています。

毎年冬になると、いわゆる嘔吐下痢症、ウィルス性胃腸炎、感染性胃腸炎等々の名前で呼ばれ大きな流行が

あるのは、小児科医はもとより、お母さんがたはよくご存じのことです。原因ウィルスはもっとも有名なものとして

ロタという名前はすでに広く知れ渡っていて、白色便性下痢症、あるいは仮性コレラという恐ろしい名前もついて

いました。たしかに、ロタでは、米のとぎ汁様、おむつからあふれるような水様便が見られ、これに嘔吐、発熱が

加わりますから、さすがの栄養満点、予備力のあるにほんの子供たちもぐったりしてしまい、点滴を要するケース

も少なくありませんでしたが、最近、ロタは影を潜め、多くはノロ(ウィルス学的にはSRSV(小さな丸い構造の

ウィルス、とかノフォークとかカリシウィルスと呼ばれていて、最近ノロという名前をもらった)だったのです。

ノロは、そもそも弱いウィルスで、CDCQ&Aではstomach flu(胃腸に来るインフルエンザ、本当のインフルエンザ

ではない)という揶揄された呼び方をされていて、症状は 日に何回も吐くからつらいけれど、usually not serious,

Most people get better within 1 or 2 daysと記載されています。事実、あわてて連れてこられますが、嘔吐はすぐ

おさまり(適切な食事療法をすれば、といってもしばらく絶食させるのですが)、あと数日下痢が続く程度なのです。

あえていえば、潜伏期が短くノロノロしていないので、急速に流行が拡大するのが危険です。

ではなぜ、こんな騒ぎになるのかというと、そもそも高齢者は冬場インフルエンザを含めこうしたちょっとした感染

でも余力がありませんから亡くなる方が増えるのは大昔から当たり前なのです。超過死亡といいますが、1〜2月

は、盛夏とともにお葬式は増えますよね。そんなことも知らない記者さんが聞きかじりで書くからです。

問題は、いわゆる老人保健施設や、何とかホームには、そもそも危ないお年寄りが集団生活をしているわけで

す。病院ではありませんから、ちょっと具合が変、でもすぐ対応できません。そういう施設なのです。家庭で家族に

囲まれていたら「大往生ですね、あまり苦しまなくてよかったですね」で済んだ話なのです。それを、やれ集団食

中毒だの、管理が悪いだの騒ぐ方がおかしいでしょう。あえていえば、お正月、子どもを連れて久々にお見舞いに

いった、子どもが数日前嘔吐下痢だった、そうしたチェックをせずに面会を許したといわれれば不手際でしょうが

年に何度も見舞いに行けない家族を謝絶はできません。

先日ローカル番組を見ていたら、某保育園児がお年寄り施設を訪問し、歌を歌ったり、踊りを披露したり、

ゲームに興じたりしていました。そのこと自体、けっこうなことですが、「なぜこの時節に?」とはらはらしました。

あと何回か予定されている由、インフルエンザが持ち込まれなければいいがと、、、、、、、。

関連サイト http://www.cdc.gov/ncidod/dvrd/revb/gastro/norovirus-qa.htm (13 JAN 04)

 

2003〜2004移りゆく時間に

 昨年、あぁ、もう一昨年になりますが、その年の瀬に書いて以来、 この項にはとうとう何も書きませんでした。

けっこういろいろなことがあったはずですが、 歳のせいか、あまり気にならなくなったのか、 なんでも寛容に

受け入れてしまうようになったのか、 ま、がたがた言ってもしょうがないかと思うようになったらしいのです。

で、昨夜から今朝にかけても、いつものようにアルコールで脳を痺れさせ、 ふわふわと時の流れに身を任せ、

今年はどうしようかな〜、、、 とぼんやり考えるでもなくテレビをちらちら見ていました。 と、真夜中に、新春対談

みたいな番組が始まり、 言うまでもない犬養美智子さんと、今をときめく養老孟司氏が突然、 そうしたバカに冷水

を浴びせるような話をはじめたのです。

 詳細は多岐にわたっていますからここで書ききれるものではありませんが、 当時10歳であった犬養さんが

その祖父を5−15事件で暗殺された話(もちろんここではテロの話から、その後も性懲りもなく繰り返される

戦争の話までふれられているわけですが) 長年携わってこられた難民キャンプでの壮絶な話まで、 この対話は

約70%がこの80にもなろうかという老婦人の 驚くべき明快なおしゃべりに費やされ、養老氏は やや醒めた例の

調子で社会解剖をひとくさりして完全な脇役に徹していました。 犬養さんはご自身、番組のなかで、

「あら、私ばかりしゃべって、 適当にカットなさって」と二度ほど言われながら、 実体験をされた方でなければ

とうてい言えない 現代の日本、そしてそこで暮らす人々への鋭い警告を発しておられました。 understand

upperstandと対比され、理解とは下からでなくてはできないということ、 これは上部組織にいる人々、お上には

とうてい現実は理解できないということであり、 人間同士、自分を下に置いてはじめて一定程度の理解が可能に

なるといったような 意味にとりました。 また、人間存在とはexistenceの、exitは「ほらどこにでもある出口で

しょう?」 とおっしゃっていました。外への意識を常に持つこと、そして実際、 外へ出てはじめて自己が確認できる

という意味と理解しました。 もちろんここでは現代の日本が抱えるマニュアル主義の教育を批判され

「なんせ、いい大学を出てボランティアをしたいって子が、洗濯機を探し出すわけですよ、 そもそも電気も水もない

キャンプでですよ!」、

「マニュアルのない教育をするマニュアルはどこにあるんですかなんて聞かれるのよ!!」

「コンピューターで勉強できる学校を作ったの、難民たちに話し言葉のなかにfatherとか、 mother ってでてくる

と、泣き出しちゃうの、でも、機械のなかに でてきてもなぜか大丈夫なのよ、コンピューターは好きじゃないけど、

ほかにしょうがなかったの」

「3000人のキャンプには3000人の支援者がいるの、 だって恐ろしい体験をした人々は、まず一晩中 じっと

手を握って上げておくしか方法がないのよ、 それでもトラウマから解放されるかどうかわからないけど」。

 とにかくこんなお話しがおよそ1時間半くらいだったでしょうか、 時を忘れ聞き入ってしまったのです。

もともと、大晦日と元旦のざわめかしい狭間は、私にとってもっとも時の感覚がぼやける、 どう過ごしていいか

わからない時間帯なのですが、今年に限っては、 予期せぬ一級の講演を聴くことができ、なんだかいい年に

なりそうな予感がしました。

 でも、こういう高揚した気分って、 日常のなかであっという間に萎えていくんですね、

体力と気力を鍛えておかないと。(2JAN 04) 


バックナンバー  2001〜2003

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1-MAR 根室のこと6-FEB 仁義礼智心16-JAN 成人式のことなど21-NOV 狂牛病異聞

21-JUN 精神医療は聖域であり続けるのか?15-FEB ゴルフ Woodsと森では、、、。

20-JAN ニュースキャスターという偉い人々 4-JAN  2001年、年頭所感

バックナンバー  2000

20-NOV 富士の高嶺に降る雪は 23-JUL  あっと驚く、くすりの使われ方 18-MAY ポリオのこと、神の国の子供たちは?

25-APR このホームページ、一歳になりました。 23-JAN 5,000アクセスに思う「Medical Netiquette」

14 JAN いよいよ、インフルエンザが 

バックナンバー  1999

19 NOV  エー! 「インフルエンザはかぜじゃない」? 23 OCT  3,000アクセス、相談100記念  17 AUG  榎のはなし

14 AUG  ついていけるか?ネットママに 02 JUL  ツ反BCGに寄せて、結核ウオーズ 28 JUN  インフルエンザと地域振興券

24 JUN  少小児科医化とインターネット 10 JUN  はしか?あせも? 16 APR  カルテの開示、さてさて

06 APR  私の骨折とインフォームドコンセント 22 MAR  育児をしない男を父親とは呼ばせない!   

 

 

 

 

                                        愛媛県宇和島市中央町1−10−5

                                        こおり小児科  桑折紀昭   

                                       ご意見、ご批判は 質問箱からどうぞ